僕はこんなことを考えている はてな出張版

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映画評:追憶の森

生きることでやれることが沢山あることを忘れずに、これからも進んでいかねばならない

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よくある質問で「海と山どっちが好きですか?」というものがある。
こんなことを聞いてどうするんだろうとは思うのだが、海は開放感があり山には静けさがあるので、気分的な感想を言えば、どちらも好きである。

しかしモンゴルみたいな内陸国だとこの質問は無いだろうし、山がほとんどない太平洋の島々などでは選択肢がなかったりするので、実はこの質問は四季もあり山も海もある自然豊かな日本だからこそ意味のある、贅沢な質問である。
古来の人々はその豊かさに対し、豊穣の祭りで祝ったり、和歌にしてその情景を切り取っていった。
日本人の豊かさは実は物質的なことではなく、心の面で美しいものに囲まれていることなのかもしれない。

一方で自殺者は年間で2万強から3万人くらいを推移している。
日本の人口比率からするとそんなに多い数ではないのかもしれないが、それでもこの国がただ幸せに囲まれているだけではないことを表している。
僕もこれまで生きてきて、1人の友人と1人の知り合いが自ら命を絶っている。
あまり関わりのない同じ会社の人というくくりとかだと、あと2~3人は増える。
ある程度齢を重ねると、それなりにそういった残念なお知らせを聞いた経験が誰しもあるだろう。
絶望に満ちた世界も、少し見方を変えて、自然の中に入ってしまえば、憂鬱な気持ちもなくなったかもしれないと考えると、なんだか切なくはなるのだが、世界の果てにある美しい世界を想像したのであれば、やむをえないのかもしれない。

僕は最近趣味で小さな山に登っている。
山に登ると、何だか自分が報われる気がして、最近本当に良いことが無いので、心の避難的に山の頂上でぼんやりして幸せを思うようにしている。
山の上で考えるのは本当にいろんなことなのだが、それはどういうわけか、駅のホームでぼんやり考えているのと違って、チープな言葉を借りれば癒されるのである。
あまり好きではないが、この癒し効果こそパワースポットに見られる霊的なものなのかもしれないが、感覚的には子どもの頃によく訪れていた場所のように、しっくりくる感じがある。
しっくりくるとは言い換えれば、リラックスできるということだろうか。
何かと気を張って生きているようで、何かを期待して生きている自分に、ありのままでいることが素晴らしいことだと教えられているような気分になる。
そして山の上で出す大抵の結論は、僕の座右の銘でもある「まあええかあ」なのである。

昔の人は山を畏怖し、同時に信仰の対象としていた。
現在も大抵の山には神社があり、山岳信仰とともに、人々は山や森をも神とし、あがめていた。
多分僕が感じたように昔の人も山にひとかどの癒しを感じていたのかもしれない。
寧ろ、テレビやパソコンで情報過多になって、感動も何も薄れてしまった電子脳のポンコツよりも、情報量が少ない代わりに、今よりずっとずっと感性が鋭かった昔の人のほうが、より敏感に癒しを感じたのだろう。
森はそういう意味では日本人が帰る場所なのかもしれない。

ということで、最近真面目な話が多いと思うのですが、今回の映画紹介も超まじめな映画、「追憶の森」である。
今やすっかりハリウッドの人感が強い渡辺謙さん主演で、富士の霊峰のおひざ元、青木ヶ原の樹海で起こった不思議体験の映画である。
主人公は自殺をしようと日本を訪れる外国人。
いきなり出だしから重いです。
ネットで知りえた日本の青木ヶ原の樹海に訪れ、服毒自殺を図ろうとするが、そこで森を彷徨う男と出会う。
結果男を救うために自身も死を諦め、やがて彼自身は救助されるのだが、森を彷徨う男の正体は何だったのか?

古来山には霊的なものが住むとされてきた。
特に日本では先述のように山に対して怖れがあるので、具現化した対象として妖怪を作り出していたようだ。
妖怪の代表的なものとしては、酒呑童子のような鬼や山を治める天狗。
夜中に包丁を研いで人を喰う山姥や巨人のダイダラボッチ(大太法師)。
奇抜なところだと、人の心を見抜いて言い当てるサトリ(覚)などがいる。

これら妖怪は怖れから生まれた妖怪なのだろうが、山にはそういった人間の本来持つ弱い部分があって、この映画も主人公の弱い心が生み出した幻想が、物語の主軸になっているように感じる。
自殺する心というものは分からないが、自分の弱さに負けて、苦しい時は誰しもが経験していることだろう。
しかし、完全に心が負けてしまわないためにも、違う目線で見ていくことや、弱い自分を回避できる大きな想像をすることで、少し心が軽くなることがあるかもしれない。
生きたくても生きられない人や、笑いたくても笑えない人がこの世にいることを知ることも大事なことかもしれない。

生きることでやれることが沢山あることを忘れずに、これからも進んでいかねばならない。

 

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