僕はこんなことを考えている はてな出張版

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映画評:心が叫びたがっているんだ

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世間に広く受け入れるためにはどういうものが必要なのか

今は2016年の11月なのだが、映画「君の名は」が大ヒット中である。
伝え聞くところによると、監督自身が認めるほどに過去の映画の名シーンがふんだんに盛り込まれているそうで、具体的には、大林信彦監督の尾道三部作や岩井俊二監督の「ラブレター」などの場面を連想するシーンが随所に見られるという。
監督のどうしても売れる映画を作りたいという思いがにじみ出ている話である。
この映画きっかっけに、若い人にもこれら古い作品のすばらしさに触れていただくと、仲間が増える感じがしてうれしいのだが、映画にも普遍的な売れる法則のようなものがあるのだなあ、と変な関心をしてしまった。

映画に限らずだが、売れる法則というものが世の中には存在はする。
有名なところでは「本日限り」や「300名様限定」という商品については、深層心理の中でその商品を特別に考える優位性が働き、購買意欲を増すというものがある。
テレビショッピングなんかではこの法則が多すぎて、逆に限定じゃない商品は売れていないのではないかと変な心配をしてしまうほどなのだが、確かにスーパーなんかでも「在庫限り」とか「本日入荷」とか書かれていると、いらない商品でも欲しくなったりはする。

音楽の世界ではカノン進行が有名である。
これはベースラインが「ド・シ・ラ・ソ・ファ・ミ・レ」と運び最後に「ド」戻るというものがそれにあたるのだが、これがヨハン・パッヘルベルという人が作ったクラシック曲がこの進行をするので、カノン進行と呼ばれているそうだ。
ギターのコードだと|C|G|Am|Em|F|C|F|G|と進む曲調で、ZARD「負けないで」や大事マンブラザーズバンドの「それが一番大事」など、90年代ヒット曲に多い気がする。
僕はギターを弾くのでもう少し書くと、よくあるものではサビに多い|FM7|G7|Em7|Am|や、リズムに使われる|Am|F|G|C|なども有名である。
結構定番的な曲調のギターリフはあるものである。
とは言え、心に訴えかける音楽にも王道があると言われると、なんだか興ざめな感じはする。

漫画の世界では少年ジャンプが打ち出した、友情・勝利・努力が有名だが、主人公が身近な存在であることも大事なのかもしれない。
最近ヒットしている漫画を見ると、主人公がどこにでもいるような少年であったりするので、漫画の世界も特別ではなく、自らを投影しやすいものが好まれているのかもしれない。

各ジャンルにこういう王道的な人気の法則があるようなのだが、実は昔から愛され続けているものがある。
ペットである。
昔むかし、僕がまだ少年だったころに、なめ猫というものがブームになった。
今思えば猫に服を着せただけの代物なのだが、よくわからないグッズができてファンシーショップみたいな所で良く売られていた。
なめ猫については最近CMで見かけて「ああ、こんなブームもあったなあ」と思い出したのだが、実は猫や犬というものは、大昔から存在し、深く愛され続けているという意味で、普遍的ヒットの法則を持っているといえる。
犬や猫は実は昔からペットとして飼われており、犬は狩猟目的ではあるが、縄文時代から飼われ、猫についても平安期の天皇が猫を溺愛していたという記載も残されているそうで、ペット歴はかなり長い。
これだけ長く愛されるのには理由があり、これらのペットは人になつく。
好き嫌いはどうあれ、人は自分の近くに来るものに対し、愛着を持ち、それらの物をシンボル化する。
要は象徴化してそのものを記号化させる。
ヒットの要素というものは、記号化された物体が、普遍的価値を持つことが重要で、それが人の嗜好と結びつくことくで、定番的な人気を得ることができる。
犬が持つヒットの要素は「愛らしさ」で猫が持つヒットの要素は「ツンデレ」だろう。
シンボリックされた定番の良さは、安定感みたいなものを作り出し、それが人々に癒しを与えるのだろう。
確かにいつもそこにある何かというものは居心地が良いものである。
堅苦しいことは考えずに、ヒットの法則に踊らされるのも悪くないのかもしれない。

とは言え、ここまでこんなことを言ってしまうとあれなのだが、こういうヒットの法則というものは実はそんなに根拠はなく、多分その道のプロたちが長年の経験でそうではないか?とたどり着いた結果に過ぎず、やはり人間の思考というものは千差万別で、且つこれだけ情報が多い社会で、画一化された趣味嗜好が存在するとは思えない。
ある種で一つの統計的傾向に過ぎず、ヒット曲が持つ魅力や、その時の時流というものも併せ持っている事は忘れてはならないだろう。

というわけで今回は、アニメ大国日本の映画紹介サイトのくせにあまり触れない長編アニメ、「心が叫びたがっているんだ」である。
ヒロインは声を失った少女。
声を取り戻すために彼女の心の傷をいやそうとする主人公の男の子。
そして野球部のヒーローからケガで一転して目標を失った球児と優等生の女の子の青春群像劇。
作品を見ると、切ない青春物で、当たり障りのない作品ではあるが、良い意味でヒット作を目指すための研究を重ねたことが感じられる映画である。

映画を観ながら昔、槇原敬之さんがまだ駆け出しのころ、ヒット曲を生み出すために寄せに行った作品を出していたが、逆にあざとさがあって売れなかったというようなことを話していたのを思い出した。
その後「どんなときも」のヒットにつながっていくのだが、研究し尽くして置きに入った作品があったからこそ、その技術が自らの表現者としての糧となり、ヒットを生み出す力に変えていくのだと教わった。
この作品の監督が次の新海誠になるかはわからないが、そういった努力が花開く日がきっと来るかもしれない。

何をするにしても、まずは世間に広く受け入れるためにはどういうものが必要なのか、ということを真摯に追求することが、成功するためには大事なのかもしれない。

 

青春も過ぎ去りし思い出の置き場所 あのころに戻れるエッセイを・・

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